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『書籍レビュー:うらおもて人生録』
うらおもて人生録 88.11.25 中央公論社 色川 武大著別名、雀聖:阿佐田哲也。『麻雀放浪記』の著者で、こちらの名前のほうが、
馴染みのある方が多いのではないでしょうか。
この本は色川武大として、生きていくうえで必要な技術とセオリーが、
語られています。
著者の幼年期から、ばくち打ち時代、作家活動と自身の人生ふりかえりながら、
生きていくための原理や原則をこれから社会に出る若い世代向けに、
わかりやすく説明。
中でも肝となる原理原則は、フォーム(型)を整えること。
勝負事は一回かぎりで終わりではなく、ずっと続く。
その道で長く続けるためにはフォームを整えなければならない。
このことはばくちであっても、野球であっても、作家であっても共通し、
人生においても同じことがいえると説いています。
またフォームとは、『これだけ守っていればなんとか生きていかれるもの』
と定義されています。
フォームを整えた上で、気をつけることは勝ちすぎないこと。
相撲に例えると9勝6敗を狙う。現在全勝していても、この先ずうっと、
勝ち続けることができるかどうかはわからない。
勝ちすぎると過信からフォームが崩れ、一転して負けが込みだし自信も崩れ、
そこから立ち直れなくなってしまうことがある。
ゆえに負けることもフォームに組み込んでおく。なぜなら目的はその一瞬の間、
勝つことではなくその道で長く続けることだから。
逆にいうと、負けてもいいラインを自分自身で理解すること。例えば交渉事において、
最終の目的を達成するために、相手にゆずれるところはゆずっておくことが
重要なのではないでしょうか。
過信して勝ちすぎるとあとで手痛いしっぺ返しがくる。
力ずくで抑え込んで得た勝利は、あとで必ず力ずくで抑え込まれる。
わたしの前の上司がまさに9勝6敗を地で行くタイプでした。細く長く、
じっくりと時間をかけてお客さまとの関係を築いていく。
交渉事も一見、相手にゆずりすぎなのではないかと思えても、終わってみれば
こちらに利があるよう、うまく収まっているケースばかり。
振り返ってみると、次の交渉にも生かせるよう、その時の交渉を布石にしているようでした。
社内はもちろんのこと、お客さまからも、さらにはライバル会社からも、
悪く言われることがありませんでした。
勝ちすぎず、負けをつくり、敵をつくらないようにしながら、最終的には、
9勝6敗の勝ち越し。
退職されて10年になりますが、いまだやんわりと存在感を示しておられます。
その道で長く続けるために、フォームを整え、勝ちすぎないよう勝ち越すこと。
それでは、フォームとはどのようにして作ればよいのでしょうか。
そればかりは、自分で考えて覚っていくしかないと著者は語られています。
『自分の過去をふりかえり、うまくいったパターンとうまくいかなかったパターンを書き出し、
それぞれのパターンを認識してフォームを整えていく。』
わたしはそのように考えました。
その他にも
≪運の考え方や自分を客観的に眺めること≫
など人生に必要な原理原則を頭で理解するというより、体に染み込むように書かれています。
これから社会に出る若い世代の方たちにぜひとも読んでもらいたい1冊です。
わたしも中学生の時に読んでおきたかったです。
本日も最後までお読みいただきましてありがとうございました。